2019年版「自動運転・MaaS領域におこる変化・潮流10大予測」を発表
- 自動運転ラボ2019.1.23
『自動運転ラボ』が展望する2019年 自動運転・MaaS領域におこる変化・潮流
2018年、日本国内ではソフトバンクとトヨタ自動車との提携や、米ウーバーや中国DiDiなどのタクシー配車サービス参入など、さまざまなニュースが流れ、海外ではグーグル系ウェイモによる自動運転タクシーの実用化で幕を閉じました。コネクテッドカーの普及や空飛ぶクルマの開発なども大きな話題になりました。
日本国内・海外の政府や企業ともに2020年を一つのターニングポイントに据えており、2019年には2020年に向けたさまざま取り組みが表面化してきます。そこで自動運転ラボは自動運転領域に特化したニュースメディアならではの目線で編集部内で協議を重ね、「自動運転・MaaS領域におこる変化・潮流10大予測」をまとめました。
レベル3搭載の市販車、国内でも発表へ
一定条件下で自動運転が可能となる自動運転レベル3(条件付き運転自動化)。独アウディが生産モデルとして世界で初めてその技術を搭載した量販車「Audi A8」を2017年に発売したものの、各国の法整備や国際基準の策定が追い付かないため、レベル2(部分運転自動化)搭載車両として販売されているのが現状だ。
そんな中、日本では自動運転の実用化に対応した道路交通法改正試案が発表され、パブリックコメントを経て2019年の通常国会に提出される運びとなっている。トヨタ自動車やホンダなど国内自動車メーカーは2020年には高い確率でレベル3相当の技術を搭載した車両を市場に送り出すだろう。2019年中には各社のコンセプトモデルも出揃うものとみられる。
自動運転タクシー・バスの実用化に向けた実験活発化
2018年12月、米ウェイモが自動運転レベル4(高度運転自動化)相当を搭載した自動運転タクシーの運行を開始し、新たな時代の到来を感じさせる事業化がついに幕を開けた。日本国内でもロボットベンチャーのZMPと日の丸交通が自動運転タクシーの公道営業サービス実証実験を行い、2020年の実用化を目指している。
東京五輪が開催される2020年は、自動運転技術を活用したサービス実用化開始の目標時期として官民の足並みが揃っており、国・地方と民間企業、大学による共同実験も2018年は盛んに行われた。今年は実証実験や走行デモの実施がますます過熱しそうだ。
タクシー業界が超戦国時代化、プロモーション合戦も
DeNAの事業拡大やソニーをはじめとした新会社「みんなのタクシー」の設立、そしてウーバーやDiDiといった大手配車サービス事業者の本格進出など、2018年の国内タクシー業界は大きな変革を予感させる年となった。JapanTaxiなどのタクシー事業者系の配車アプリを含めた超戦国時代が始まったと言える。
DeNAの「0円タクシー」、DiDiの「初乗り無料」などの斬新で大胆なプロモーションも2018年は話題になり、今年も各社はシェア獲得に向けさまざまな戦略を打つとみられる。サービス提供エリアの拡大も進み、今年は都市部以外でも使う配車アプリの選択肢が増えていくことになりそうだ。
「トヨタ×ソフトバンク」に続き、IT企業巻き込む連携加速
自動運転や新しいモビリティサービスを見据え、共同で新会社の設立を発表したソフトバンクとトヨタ自動車。2018年度内に新会社「MONET Technologies」を設立し、オンデマンドモビリティサービスを皮切りに事業に着手する。
このような自動車メーカーとIT系の提携は近年のトレンドで、グーグルやインテル、アップル、マイクロソフト、百度など、大半の大手IT系が何かしらの形で自動車メーカーと手を組んでいる。今後、自動運転やコネクテッド技術の進展、MaaS(移動のサービス化)の浸透などに伴い、こうした結びつきはいっそう強まることが予想される。
空飛ぶクルマ、日本初の有人飛行実施で投資マネー急流入か
空飛ぶクルマの開発を日本国内で手掛ける有志団体CARTIVATORと株式会社SkyDriveは2019年6月、日本初となる有人飛行試験を実施する。有人飛行試験で注目度が飛躍的に高まることで多額の投資マネーが流入し、映画や空想の中だけで存在した乗り物の実用化への取り組みがより一層日本で進みそうだ。
国も空飛ぶクルマの産業化を積極的に支援している。国土交通省と経済産業省が主導する官民協議会は2018年11月に発表したロードマップの素案に、2020年代に空飛ぶクルマの事業化を実現させるという目標を盛り込んでいる。まず実用化は地方から進めていく計画だ。
改正道路交通法の成立見越し、保険業界が商品開発に注力
警察庁が自動運転の実用化に対応した道路交通法改正試案を2018年末に発表し、今年の通常国会に案が提出される予定だ。審議が順調に進み計画通り成立すれば、2020年前半にも改正法が施行されることになる。こうした動きに素早く反応しているのが保険業界だ。
政府は既に、自動運転における事故の責任は車の所有者にあるとする考え方をまとめ、自動車損害賠償責任保険においては従来通り相手の被害を補償すべきとの方針も打ち出している。損保会社は新たな保険商品の研究・開発やサポート体制構築にむけた実証実験などを既に開始し、自動運転の解禁に合わせて新商品を販売できるよう躍起になっている。
次なる注目は「自動運転車の中」の覇権争い
自動運転車の実現はもはや夢物語ではなくなり、焦点は「いつ実現するか」といったことへ移り変わっている昨今。自動運転技術とは別に開発が加速しているのが、自動運転車だからこそ実現できる車内システムや利便性の高いサービスだ。
特にインフォメーションとエンターテインメントを組み合わせた「インフォテイメント」関連サービスが熱い。ハンドルなどが不要となる広い車内スペースを生かした情報発信の方法を各社が研究し、広告業界なども熱視線を浴びせている分野だ。コネクテッドカーが進展すれば決済の機会も増加することが予想される。
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LiDARが低価格化、数百万円から数万円に?
市場規模が2030年には現在の約200倍となる5000億円規模まで拡大すると言われている「LiDAR」。自動運転において目の役割を担うセンサーで、数年前までは数百万円が相場だったが、米ベロダインライダーをはじめとする大手が開発にいっそう注力し、多くのスタートアップの登場もあって性能の向上や低価格化が著しく進んでいる。
今後市場に各メーカーが投入する自動運転レベル3の量産車にLiDARが搭載されていくようになれば、大量生産によって価格は一層下落し、1台当たり数万円程度が相場になるとの見方も強い。
サブスク型など車の所有の在り方が変わるサービス続々
2018年11月、トヨタ自動車は愛車サブスクリプションサービス「KINTO」を2019年初旬に開始することを発表した。カーシェア業界ではDeNAの個人間カーシェアサービス「Anyca」の登録会員数がサービス開始3年で17万人を突破し、依然として高い人気を集めていることが鮮明になった。
ディーラーや中古車事業者などでローンを組んで愛車を購入するのが当たり前……という時代が変わりつつある。サブスクリプションやカーシェア事業の多様化などで、自動車所有の概念が変わりつつある中、2019年はより多くの選択肢が出てくる一年になりそうだ。
技術者不足深刻化…日本でも欧米流のドライな引き抜き合戦
欧米では技術者の引き抜き合戦が常態化している。2018年には、米アップルがEV大手の米テスラ・モーターズやグーグル系ウェイモから技術者を引き抜いたことなどがニュースになった。
日本国内でも技術者需要の高まりとともに技術者の絶対数不足が指摘されており、優秀なエンジニアの引き抜き合戦が国内でもドライに繰り広げられるというのは、もはや想定外の話ではないだろう。優秀なスタートアップに大手企業などが多額の出資を行い、実質的な技術と人の「囲い込み」を行う例も次第に増えていきそうだ。
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